紳士の小さな家づくり
紳士の小さな家づくり
紳士の小さな家づくり
2020年9月24日
8年ぶりのブログ再開となります。
これからも末長くお付き合いいただけましたら
幸いです。
9月の小学生クラスは「紙漉き」と
「紳士の小さな家づくり」の制作をしました。
「紙漉き」の授業では、みんなカラフルで可愛い
ハガキができました。
紙を作るのは手間がかかりましたが
「本当に紙ができた!」
と歓声が上がっていましたね!
「紳士の小さな家づくり」の授業では
劇作家の別役実さんの「小さな家と5人の紳士」
という舞台に出てくる小さな家をテーマに作品を
作りました。
別役実さんは私の好きな劇作家です。
今年の3月3日に82歳でお亡くなりになりました。
コロナ禍であまり報道されませんでしたが
日本を代表する劇作家の一人で、最後まで闘病しつつ作品づくりに励まれていました。
不条理劇、ナンセンスコメディーを多く作られてます。
大笑いする面白さではなく、クスッとしちゃう独特のセンスが面白い作風です。
日本劇作家協会のHPで紹介されているのでよかったら見てくださいね。
http://www.jpwa.org/main/about/obituary-betsuyakusan
「小さな家と5人の紳士」は紳士シリーズとして
いくつか作品があります。
いずれの作品も、なんやかんやと不条理な話が進み
なんやかんだで終わるお話です。
でも、観る人の心に響くものや
「ちょっと立ち止まって考え直すきっかけ」
みたいなものがちりばめられているお芝居です。
「東京乾電池」という柄本明さんがやっている
劇団でも紳士が上演されていました。
今回の工房の課題「紳士の小さな家づくり」では
制作する前にみんなで戯曲を少し読んでみました。
「小さな家」は劇中の舞台セットの一つです。
ただのダンボール箱なのですが
そのダンボール箱を巡って話が進み
途中女2人も登場し事件も起こります。
そして最後には紳士5人がダンボール箱で小さな家を作るシーンがあります。
男2:家を作っているんだ。
自分たちが住むんじゃないぜ。
ただ遠くから眺めて、ああ住んでるなあって
そう思うんだ‥‥。
男5:それがいいのか‥‥?
男4:いいんだよ。
だってね、俺たちは遠くから
ああ住んでるなあって、思ってるけど
中のやつらは俺たちがそう思っているなんて
全然知らないんだ‥‥。
紳士のセリフには
「俺はこんなふうに思うんだ‥‥。」
「それがいいのか‥‥?」
「これはね、こんなふうにいいんだよ‥‥。」
「お前はどう思うんだ‥‥?」
というやり取りがたくさん出てきます。
物事に関する価値観はみんな違うんだね。
一人一人違うふうに感じてて面白いね〜、と
いつもの自分と違う視点を、おかしなことばかり言う
紳士達の目を通して、体感する舞台だと思いました。
舞台では最後に小さな家に明かりを灯し
それを取り囲む5人のシルエットを残して暗転
します。
子供達も、ああ住んでるなあって「やつら」のことを想像しながら小さな家を作りました。
そして、斜向かい公園に行き
舞台と同じように明かりを灯して
みんなの小さな家に楽しい想像を膨らませました。
詩的で幻想的な空間が広がって
ちょっとした屋外劇場にいるような気持ちに
なりました。
みんな思い思いの「奴ら」を住まわせて
「ああ、住んでるなぁ」って
ワクワク、クスクス楽しみました。
天国から別役実さんも見てくれたかな。
この気持ちが届くといいな。
別役さんの作品と出会えた事に
感謝の気持ちで一杯です。
私は学生の時、舞台美術制作のアルバイトをしていたので、今回は久しぶりに舞台セットを作っているようでとても楽しかったです。
美輪明宏さんの舞台セットを作る仕事が多く毎回膨大な量を作っていましたが、このお話はまたの機会に‥‥。